プレイリスト入りを目指す曲作りのコツ:初心者のための構成とサウンドメイク入門
ストリーミングサービスが主流となった現代において、多くのリスナーはプレイリストを通じて新しい音楽と出会っています。そのため、楽曲制作においても「いかにプレイリストに選ばれ、そして繰り返し聴いてもらえるか」という視点が非常に重要です。
このガイドでは、音楽制作を始めたばかりの方が、ストリーミング時代に求められる楽曲の特徴を理解し、実際に「聴き手を惹きつける」曲を作るための構成とサウンドメイクの基本的な考え方をご紹介します。
プレイリスト時代の楽曲に求められるもの
現代のリスナーは、多種多様な楽曲の中から瞬時に自分の好みに合うものを選び、合わないと感じればすぐにスキップします。このような環境で楽曲を聴いてもらうためには、いくつかの特徴が求められます。
- 冒頭のフック(Hook): 楽曲の最初の数秒間でリスナーの注意を引きつける、印象的なメロディやサウンド、リズムのことです。ここでのインパクトが、聴き続けるかどうかの大きな要因となります。
- 簡潔な構成: 長尺のイントロや複雑な展開よりも、主要なメロディやテーマに素早く到達する構成が好まれる傾向にあります。
- リピート性: 一度聴いたらまた聴きたくなるような、中毒性のあるフレーズやリズムが重要です。プレイリストで何度も流れても飽きさせない工夫が求められます。
- 統一された音質: どんな環境で聴かれても安定したクオリティを保つためのミックスとマスタリングの基礎が大切です。
聴き手を惹きつける「構成」のポイント
楽曲の構成、すなわち曲全体の設計図は、リスナーを飽きさせずに最後まで聴かせるために不可欠です。
1. 曲の「セクション」を理解する
一般的なポップスやロックでは、楽曲はいくつかのセクションと呼ばれる部分に分かれています。
- イントロ(Intro): 楽曲の導入部分です。冒頭のフックを配置し、リスナーの耳を惹きつけます。
- Aメロ(Verse): 曲のストーリーや情景を語る部分です。メロディは比較的落ち着いており、サビへの期待感を高めます。
- Bメロ(Pre-Chorus): Aメロとサビを繋ぐ役割を持ち、徐々に盛り上がりを見せる部分です。
- サビ(Chorus): 楽曲の中で最も印象的で、繰り返し歌われる核となる部分です。ここが楽曲の「顔」となります。
- 間奏(Instrumental): ボーカルがなく、楽器の演奏で展開される部分です。
- Cメロ(Bridge): サビとは異なるメロディや展開で、楽曲に変化や深みを与える部分です。
- アウトロ(Outro): 楽曲の終わりを告げる部分です。
初心者のうちは、これらのセクションを意識して、まずはシンプルな構成で楽曲を作り始めることをお勧めします。例えば、「イントロ → Aメロ → サビ → Aメロ → サビ → 間奏 → サビ → アウトロ」といった構成が一般的です。
2. 展開でマンネリを防ぐ
同じメロディやリズムが続くと、リスナーは飽きてしまう可能性があります。楽曲に展開を加えることで、聴き手の興味を引き続けることができます。
- 楽器の抜き差し: 例えば、Aメロでは少なめの楽器編成で、サビで一気に楽器を増やして厚みを出すなど、各セクションで使う楽器の数を変えることでダイナミクスを表現します。
- 音色の変化: 同じメロディでも、使用するシンセサイザーの音色を変えたり、ギターのエフェクトをかけたりすることで、印象を変化させることが可能です。
- リズムの変化: ドラムのパターンを少し変える、パーカッションを追加するなど、リズムに小さな変化を加えることで、楽曲に動きが生まれます。
印象に残る「サウンドメイク」の基礎
楽曲の魅力は、メロディや構成だけでなく、聴こえてくる音そのものの質、つまりサウンドメイクによって大きく左右されます。
1. 音色選びの重要性
DAW(Digital Audio Workstation)には、ピアノ、ギター、シンセサイザー、ドラムなど、様々な楽器の音がプリセットとして用意されています。これらの音色を選ぶことは、楽曲の雰囲気やジャンルを決定づける上で非常に重要です。
- 楽曲のイメージに合わせる: 明るい曲であれば明るい音色のシンセ、落ち着いた曲であれば柔らかなピアノなど、イメージに合う音色を選びます。
- 楽器同士のバランス: 複数の楽器を使う場合、それぞれの音色がぶつかり合わないように、役割を考えて選びます。例えば、ベースは低音域、リードメロディは中高音域を担う音色にすると、クリアに聴こえやすくなります。
2. 簡単なエフェクト活用
DAWには様々なエフェクトが搭載されており、これらを使うことで音に深みや広がりを与えることができます。初心者でも使いやすい代表的なエフェクトとその効果をご紹介します。
- リバーブ(Reverb): 音に残響(残響音)を加えるエフェクトです。まるで広いホールで演奏しているかのような空間的な広がりを演出します。ボーカルやストリングス、パッド系の音色にかけることで、豊かな響きを与えられます。
- ディレイ(Delay): 音を遅らせて繰り返すエフェクトです。山びこのように音が反響する効果や、独特のリズム感を生み出すことができます。ボーカルやギターのソロなどにかけると効果的です。
- EQ(Equalizer): 音の周波数(高音、中音、低音)を調整するエフェクトです。特定の音域を強調したり、不要な音域をカットしたりすることで、各楽器の音がよりクリアに聴こえるように調整します。例えば、こもった音をクリアにしたり、音がぶつかり合っている部分を整理したりする際に使用します。
これらのエエフェクトは、かけすぎると不自然になることがあるため、少しずつ調整しながら試すことが大切です。
3. ミックスの基本概念
ミックスとは、複数の楽器の音量や定位(パン)、エフェクトなどを調整し、楽曲全体のバランスを整える作業です。
- 音量バランス: まずは各楽器の音量が均等に聴こえるように調整します。聴かせたいボーカルやメロディが埋もれないように、他の楽器とのバランスを取ることが重要です。
- パン(Pan): 音を左右どちらから聴こえさせるかを調整します。例えば、ドラムのハイハットは右、ギターは左、といったように配置することで、音に広がりと立体感を与えることができます。
本格的なミックスは奥が深いですが、まずは「すべての音がクリアに聴こえるようにする」ことを意識して取り組むと良いでしょう。
初心者でも実践できる具体的なステップ
- 好きな曲の構成を分析する: 自分が「いいな」と感じるストリーミングで人気の曲をいくつか選び、その曲がどのように構成されているか(イントロは何秒か、サビは何回出てくるか、どんな楽器が使われているかなど)を書き出して分析してみましょう。
- 短いフレーズから作り始める: いきなり一曲全てを作ろうとせず、まずは4小節や8小節の短いメロディやリズムパターンから制作を始めてみてください。
- DAWのテンプレート活用: 多くのDAWには、さまざまなジャンルの楽曲テンプレートが用意されています。これらを活用することで、効率的に制作を進めることができます。
- シンプルなアレンジから始める: 最初から多くの楽器を詰め込まず、ドラム、ベース、コード楽器(ピアノやギター)、メロディ楽器といった最小限の編成で楽曲を形にすることを目指しましょう。
まとめ
プレイリスト時代の音楽制作は、聴き手の耳を惹きつけ、繰り返し聴いてもらうための工夫が求められます。楽曲の構成やサウンドメイクは、そのための重要な要素です。
今回ご紹介したポイントは、あくまで基本的な考え方です。大切なのは、実際にDAWを操作しながら、様々な音色やエフェクトを試し、自分なりの表現方法を見つけていくことです。焦らず、一歩ずつ、楽しみながら音楽制作に取り組んでいきましょう。
このサイトでは、他にもストリーミング時代の音楽制作に役立つ情報を多数ご紹介していますので、ぜひ他の記事も参考にしてみてください。